i want,
…公民館の庭には、誰もいなかった。
当然だろう。クラスの皆は、今は広間で騒いでるんだし。
あたし達は二人とも黙ったままだった。
何かを言えばそれが別れに直結する気がして、何も言えなかった。
「…雨、」
先に口を開いたのは、真依だった。
「雨、やんだね」
真依に言われて気付く。
いつの間にか、雨はやんでいた。
「ほんとじゃ」
「よかったね。やっぱ、ずっと雨ってのも嫌じゃしね」
真依は空を見上げ、目を細めた。
あたしは息苦しくて俯く。
…ほら、やっぱり。
真依の声を聞くと、今日が別れなんだと思い知らされる。
真依がいなくなることを、実感させられる。
「…あお」
不意に真依が真剣な声で言った。
あたしは俯いたまま掌を握る。
「…ごめんね」