i want,

「何ていうんけ?」
「何?」
「名前」

いい姿勢とは言い難い座り方の彼を横目で見ながら、渋々自己紹介をする。

「…矢槙あおい」
「じゃけ『あお』か」
「そっちは何で『かき』なん?」
「垣枝じゃけぇじゃろ」

ふぅん、一応頷いて、視線を前に戻す。
みんな席にはついていたけど、まだざわついた教室。

先生が口を開く直前、再び隣から聞こえた。


「垣枝ヒカル」


「ほら、もう静かにせぇ!」、先生の声が教室に響き、徐々に鎮まっていく教室。

再び横目で彼を見たが、彼はあのふてぶてしい態度のまま、視線を前に送っていた。

あたしもまた、視線を前に戻す。


先生が今日の予定を話し始めた。

さわさわと春の風が、ようやく落ち着いた教室を遊び回る。


10歳、小学5年、春。


頬杖をついたまま、新しい世界が始まろうとしていた。












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