i want,

仲良し




……………

「あお、宿題見せてや」

朝学校に来て、一言目にそれ。挨拶は人付き合いの基本だと親に教えられてこなかったのだろうか。

「いやじゃし」
「そんなこと言って、あおは優しいけぇ絶対見せてくれる」
「おだてたっていやじゃ!」

「冗談じゃて」、笑いながら隣の席につく。
この座り方を見るのも、もう慣れた。

「…今日こそ席替えせんじゃろうか」
「こないだしたばっかじゃん」
「なんでまた垣枝の隣なんじゃろ」

本気で溜め息をついて机に突っ伏せる。

「あおの隣は居心地がええけぇ」

どうせあの、小馬鹿にした様な笑い顔で言ってるんだ。
わかってるからこそ腹がたつ。


「ヒカル、」


落ち着いた声が聞こえた。
垣枝の事を名前で呼ぶ人は、あたしの知る限りこいつしかいない。

顔を上げて、そいつの顔を見た。

「…朝からぶっさいくな顔だね、矢槙」

垣枝の態度は小馬鹿にしたもの。でもこいつの態度は、確実に『馬鹿にした』ものだ。

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