i want,
「お前ら、ちょーこっち来いや!」
「えぇ?三年の校舎?」
「昌と大輔がお前らの制服姿見たがっちょるけぇ」
「4組じゃけぇの」、そう叫び残して、祐ちゃんの顔は奥に引っ込んだ。残されたのは、痛いほどの視線、視線、視線。
「もぉ、まぁた勝手なこと言いよるし。誠にそっくりじゃ」
口許を尖らせながら有希が呟いた。
祐ちゃんは誠のお兄ちゃん。つまり、あたし達の幼なじみでもある。
「あおちゃん行く?」
「え、どうしよ」
「有希行かんよー」
周りの視線を全く気にせずに、有希は靴を脱いだ。こういうとこ、ほんと尊敬する。
が、今はそんなことを考えてる場合じゃなかった。
ここで二人とも祐ちゃんの所へ行かなければ、下手したらあたし達のクラスにまで現れかねない。いや、確実に来る。
そういう目立ち方は極力避けたかった。ただでさえ、さっきの会話でだいぶ目立ってしまったのに。
人の手で目立つのと、自分の力で目立つのとでは、大きな違いがあるのだ。
「…あたし行ってくるわ」
後々のことを考えて、あたしは祐ちゃんのクラスに行くことにした。
有希は少しだけ目を丸くして、「じゃあ祐ちゃん達によろしく言っちょいて」と告げる。
あたしは有希と手を振って別れてから、慣れない階段を駆け上がった。