i want,
「あおいちゃんって言うん?祐の妹?」
「あ、いえ。えっと…幼なじみです」
「へー!え、大輔とか昌とも?あ、そっか!神楽のある地区の子だ!」
ニコッと笑うその笑顔は、目を見張る程に大人だった。
長い茶色い髪は丁寧に巻かれていて、スカートから伸びる形のいい足は綺麗に組まれている。
たった3歳。なのにこんなにも違う。幼なじみのみんなとも違う、妙な緊張感を抱く。
「エリカ、あおがびびっちょるわ」
「え、嘘?」
「い、いえっ!全然そんなことないですっ!」
にやりと笑ながら大ちゃんが彼女に言う。エリカと呼ばれたその先輩に向かって、あたしは必死に首をふって否定した。
「あははっ、可愛いなぁ。初々しいわぁ」
そんなあたしに先輩は笑いかけながら、祐ちゃんとは違う優しい手付きであたしの髪を撫でた。
「よろしくね、あおちゃん。なんか困ったことあったら、遠慮なく声かけてね」
まるで生まれたての雛の様なあたしと、綺麗な大人の鳥の様な先輩。
これが、あたしとエリカ先輩との出会いだった。
…思えば、この出会いからあたしの中学生活は始まったのだった。
もしあの時祐ちゃんに呼ばれずに、エリカ先輩とも出会わなければ、もしかしたら全く違う道を歩いていたかもしれない。
あたしが思っていたよりも、中学校という世界は広く、そして、狭かった。