i want,


……………

退屈な入学式が終わり、中学生活の大体の説明を受けてから、あたし達はようやく肩の力を抜くことができた。

教室が少しずつざわめき始める。やっぱり同じ小学校出身の子達同士が集まっている。
あたしと同じ小学校出身の子も勿論いた。でも会話をすることはない。さとや卓也は違うクラスだ。

教室のざわめきの中、あたしは机にうつ伏せる。

一瞬、真依が恋しくて仕方なくなった。

「ねぇ、それどこで買ったん?」

不意に頭の上から声が降ってきて、あたしは思わず顔を上げた。
目の前でツインテールが揺れる。あの大きな瞳があたしを見つめていた。

「え?」
「これ、このポーチ」

瞳はあたしを見つめたまま、指は机の上を指している。

「あ…小倉やけど…」
「小倉?矢槙さんも小倉行くん?」

彼女の目が一層丸くなり、笑顔で前の席に座った。前の席は彼女の席じゃないのだが、彼女はそんなこと気にも止めずに話を進める。

「どこ?チャチャタウン?」
「いや、ラフォーレ」
「綾もラフォーレよく行くっ!このブランドもめっちゃ好きで、でもこれ限定品やなかった?じゃけ買えんかったんよね。いいなー、やっぱ春休みもっかい行くべきやったなぁ」

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