i want,

相槌を挟む暇もないくらい、彼女は勢いよく喋った。圧倒されているあたしに気付いたのか、「あっ、ごめんごめん」と笑い、改めて席に座りなおした。

「二小の西崎綾実です。綾実でも綾でもいいよ。矢槙さんは?」
「あ…と、矢槙あおいです」
「一小?」
「うん」
「あおいちゃんかぁ、可愛い名前じゃね」

そう言ってにっこり笑う彼女の方が、よっぽど可愛いと思った。

「何て呼ばれちょった?」
「基本的…あお、かな」
「あおね!じゃー綾もあおって呼ぼ!ね、仲良くしてねっ」

彼女はその人懐っこい笑顔をあたしに向けた。中学に来て初めて、胸が高鳴っていることに気付く。

一瞬呆然としてしまったが、すぐにあたしも笑顔を向けて頷いた。




新しい季節、春。何がきっかけで道が変わるかなんてわからない。ほんの小さな出来事が、180度変化をもたらすことだってある。


ほんの少しの遅刻と小さなポーチであたしの中学生活が180度変わることになるなんて、その時は思いもしなかった。











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