i want,


……………


「あーおっ!はよー」


いつもの渡り廊下を歩いていたら、いつもの声があたしを呼んだ。
視線を前に送ると、階段の下に綾達が座っている。あたしは笑顔で手を上げて、「おはよ」と返した。

「ね、見てこれっ」
「わ、香緒染めたん?」
「うん!昨日綾にやってもらったっ」

肩下まである香緒の茶色い髪は、綾の色より少し明るかった。あたしはその髪を撫でて「似合う似合うっ」と笑う。
カバンを階段の横に投げ置いて、みんなの輪の中に入った。

「あおさ、部活決めた?」
「部活ー?」

由利がポーチを開けながら聞いてきた。中から多分新色であろうグロスを取り出す。由利は最新メイクに目がないのだ。

「一応決めちょるよ」
「えっうそ!綾聞いてないしっ!何に入るん?」
「多分陸上」
「そうなん!?香緒も陸上じゃよ!」

身を乗り出してきた綾の上から香緒もまた乗り出してくる。

「あおも香緒も陸上なんじゃー。じゃー綾も陸上にしよっかな」
「なんだよその基準」

由利が笑いながら綾の頭をはたいた。でも由利も「陸上ねぇ」と満更でもなさそうな声で呟いている。

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