i want,


「うっさいわ、田口」


睨み付けてそういうあたしに馬鹿にした笑みを残して、田口は垣枝の方を向く。

「母さんがおばさんにって」
「なんじゃ?」
「知らない。お金とかじゃない?」

「子どもに預けてええんかの」、ははっと笑いながら、垣枝はその封筒を鞄に乱雑に押し込んだ。
この風景は、もう見慣れてる。

「なんけ、じろじろ見て」
「べ、別に見ちょらんっ!」

垣枝と目があって、思わず大袈裟にそらした。

「相変わらず変な奴だね」

確実にあたしを馬鹿にして、田口は自分の席に戻って行った。その背中に向かって、「なんけ、チビ!」と小声で呟く。

そんなあたしに、垣枝が笑った。

「身長はあいつのコンプレックスじゃけ、言っちゃるねぇや」
「知っちょる。じゃけわざと言いよるんじゃもん。なんであいつあんなにいちいち人をバカにするんじゃろ」
「しょうがないじゃ、秀則より確実にあおのがバカなんじゃけ」
「垣枝に言われたくないっ!」

垣枝の椅子の足を蹴る。「おお怖っ」と大袈裟に驚いてから、笑って男子の輪の中に入って行った。

ふんっと鼻を鳴らして、あたしはその光景を眺める。


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