i want,
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中学校という場所は、通えば通う程不思議な場所だった。5月も終わりに近付けば、みんなその社会に順応し始める。
小学校とは違い、みんな同じ制服だ。でも無駄に個性を主張したがる年頃だからか、スカートを短くしたり、シャツの色を変えてみたり、男子も女子も抜かりがない。
そうすることによって見事に『自分の力』で目立つことに成功した子達が、中学校という社会の中の権力者となるのだ。
女子の権力者の擁立は簡単だった。美晴の金髪に勝てる人なんか、いるはずがない。
「あおい、香水貸して」
いつもの階段のたまり場。美晴はあたしのカバンから覗くニナリッチを取り出した。
「美晴、アナスイは?」
「飽きたんちゃ。あー、あおいの匂いや」
笑いながらシュッと手首につける。それを首元に持っていった拍子に、少し伸びた金色が揺れる。
「アナスイ使う?」
「え、いいん?」
「その代わりニナリッチ貸して。しばらく交換しよ」
美晴はがさごそとカバンを漁り、まだたっぷりと入っているアナスイをあたしに投げた。「サンキュー」と受け取り、美晴と同じ様に手首につける。
美晴の匂いがあたしの匂いを消した。なんだか変な感じ。