i want,

「いいんですか!?」
「うん。あたし裕のジャージもらったから使わんけぇ。あおちゃん陸上入ったんじゃろ?多分ジャージ一着じゃ足りんと思うし、使いぃ」

「お古で悪いけど」と呟く先輩に思い切り頭を振って、「全然そんなことないです!」と勢い良く言った。

「ありがとうございます!使わせてもらいますっ」
「よかった。また何か使わんのあったらあげるけぇ」

そう言って立ち上がり、「じゃねっ」と今降りた階段を上がって行く。
その長く細い足が階段を駆け上がるのをみんなで見送り、先輩の足音が完全に消えた後に綾が叫んだ。

「いーなーっ!ちょ、あおまじうらやましいしっ」

みんながエリカ先輩のジャージを囲む。黄色い声が辺りに響いた。

「え、あおエリカ先輩と仲いいん?」

聞いてきたのは、さやこ。美晴の友達で、新しく仲良くなった。綾に負けず劣らずの長い髪がさらっとなびく。

「うん。エリカ先輩の友達があたしの幼なじみじゃけぇ」

敢えて『友達』と表現したが、多分裕ちゃんはエリカ先輩の『彼氏』なんだろう。普段気恥ずかしくてあんまりそういう話しはしないけど、先輩の香水の香りで推測できた。

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