i want,
美晴もエリカ先輩も、『自分の力』であの場所にいる。圧倒的な、絶対的な存在感。それは確実に彼女達のオーラだ。
でもあたしは違う。
裕ちゃんと幼なじみだから、エリカ先輩に気に入られたから、綾と仲良くなったから、美晴と知り合うことができたから、今の地位にいる。
『自分の力』じゃない。
『他人の力』で成り立っている世界。
でも。
「…綾」
教科書を手にした綾が振り向く。くるりとした瞳と栗色の髪があたしの視界を塞ぐ。
「週末、綾んち行っていい?」
…それじゃ駄目だ。
『自分の力』で世界を創らなきゃ。
じゃなきゃあたしは、彼女達に勝ったことにならない。
あたしの世界を構築するのは、誰でもない、あたしなんだ。
中学校という社会の仕組みを、あたしはあたしなりに理解し始めていた。
その中で必死に、立っていようともがいていた。