i want,
沈む夕日が、輪郭をぼやけさせている。
誰にもばれない程度に、あたしの胸は高鳴った。
「部活終わったん?」
「うん、見たら陸上も終わりかけじゃったけぇ、綾実待ってた」
「わーい!ありがとっ」
さっき綾が言ったセリフをそっくりそのまま返してやろうか。
二人のやりとり、特にさとの締まりのない笑顔にあたしは方眉を下げて笑った。
綾とさとが付き合い出したのは、5月の終わりだった。
綾がさとを気に入っていたのは知っていたが、まさか本当に付き合うことになるなんて思いもしなかった。
二人のいちゃいちゃぶりは校内でも有名で、誰が言い始めるでもなく『バカップル』の称号を欲しいままにしている二人だったが、どちらかと言えば可愛らしい二人は確かにお似合いだ。
身近で見せつけられるのがに鬱陶しくないと言えば嘘になるが、綾もさともあたしの大切な人に変わりはないので、正直嬉しい気持ちも抱いていた。