i want,
「部活楽しいけ?」
そんな中、はっきりと垣枝の声が届く。
少し、しゃがれてる様に思う。
「うん、走るの好きじゃし。垣枝は…バスケじゃっけ?」
「おう。先輩がうざぁてやれんわ」
「なにそれ」と笑いながら、あたしは垣枝を見上げた。
並んで歩くとわかる。同じ高さの目線だったのが、今では全然違う。
喉の部分の出っ張りが、なんだか恥ずかしくて目を反らした。
「日ぃ焼けたなぁ」
「え?」
一度反らした目を再び向けると、垣枝はニヤリと笑ってあたしを見下ろしていた。
「俺より黒いわぁ」
「な…っ、そんなことないもんっ!」
「ほうけー?したら腕出してみぃや」
挑発的な垣枝の口調。こういう所は昔から変わってない。
ずいっと前につき出した垣枝の腕の隣に、あたしは自分の腕を並べた。
垣枝の腕より短いあたしの腕。
並べてみたらよくわかる。
垣枝の腕は、男の子の腕だった。
心臓が小刻みに、ハイペースに動く。
少しだけ触れている腕の皮膚から伝わらない様に、あたしは急いでそれを引っ込めた。