i want,
予想だにしなかった垣枝の言葉。あたしは理解するのに時間がかかった。
学校に泊まる?
「大川先生が校長に掛け合ってくれたらしくて、小学校に一晩泊まれるんじゃて」
「まじで?」
「まじで。具体的な計画は神野らぁが立てよるじゃろうけど、学校に泊まるなんて滅多にできんことじゃろ?」
「うん…すごい!すごいね!」
気付いたらあたしのテンションも上がっていた。
誰もが一度は憧れる、夜の学校。
日常の中の非日常を垣間見ることができそうな気がして、胸が踊る。
元々お祭り好きの血が騒ぎ、さっきとは違う意味で心臓が高鳴るのがわかった。
でもその中で、確かに相反する不安も芽生えていた。
「同窓会…か」
小さく呟く。その言葉を口の中で転がす度に、不安が募るのがわかる。
同窓会は、すなわち過去に戻るということで。
新しい世界に生きているあたしに、果たしてそれができるのだろうか。
あの頃とは確実に違うあたしで、あの頃の場所に戻るなんて。
…そんなの。