i want,
あたしを取り巻く世界は変わる。一本の木が枝分かれしていき、それはやがて空一杯に広がる。
でも、垣枝だけは別だった。
その木の下で、黙って日陰に腰かけている様な、そんな存在。
特別だとか、そんなんじゃなかった。
ただ、一番安全な場所にいつもいた。
あたしの中から消えない、一番安全な場所に。
それはいつまでも変わらないのだと、幼いあたしは信じていた。
…ヒカル。
あの頃のあたしは本当に子どもで、変わり続ける世界の中で、あなたにだけ不変を願っていた。
あたしは自ら変わっていったのに、変わらないことを願うなんて、そんなの馬鹿げた話だよね。
でもヒカルは、あたしの中では不変だった。
あなたの定位置はあたしの一番近い所だと、何故だか信じてやまなかった。
信じることとわかり合うこととは、似ている様で全然違ったんだね。
…ヒカル。
あたしはあなたの、全てをわかったつもりでいた。
それは本当に思い上がりで、あなたを傷付けたことさえも、あたしはずっとわからずにいたね。
ごめんね、ヒカル。
もう届かないかもしれないけど、あたしは何度でも呼び掛ける。
ヒカルの定位置を奪ったのは、他でもない、あたし自身だった。