i want,


……………

つうっとこめかみから流れた汗を、片手でぐいっと拭う。
暑苦しい長い髪を大雑把にまとめて、手首につけていたゴムで結んだ。

夏風に乗ってきたのは、どこか懐かしい塩素の香り。

中学校にも勿論プールはあるが、小学校のそれとはどこか違う気がする。

ヒールの高いミュールを鳴らして、体育館へと向かった。


「おっ、遅刻あおがようやく来たわぁ」

重い扉をギッと開けると、中から卓也の声が聞こえた。
同時に鳴る、ダムダムという懐かしい音。

「おっせーよ!」
「おぉ!やっぱ学校で見るより派手な頭しちょるわ」
「うっさい!変わらんっちゅーの!」

ギャハハと決して上品とは言えない笑い声が響く体育館に、あたしはミュールを脱ぎ飛ばして入って行った。


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