i want,
「あれ?さとは?」
くるっと辺りを見渡して気付く。幹事のはずのさとの姿が見えない。
「あぁ、今先生の車で買い出し行っちょるわ」
「買い出し?」
卓也曰く、夜ご飯の材料(カレーだそうだ)や、夜の花火を買いに行っているらしい。
くるくるとボールを指の上で回しながら、田口が付け足す。
「ヒカルと菊地達もついて行ったみたいだけどね」
そう言えば、垣枝の姿も見えなかった。ついでに言えば、みど達も。
「ふーん…」
小さく呟いて、近くのボールを拾った。右手、左手とボールを遊ばせる。
脳裏に、卒業式の日のみどが浮かんだ。
夕日に光っていた第2ボタンを、今も彼女は大事に持っているのだろうか。
そういう想いを、今でも。
…何度かボールを右から左に移動させた所で、外からタイヤの音が聞こえた。
「おっ、帰って来たかな」
卓也が先頭をきって駆け出し、体育館の扉を開ける。
夏の細い日射しが徐々に広がり、体育館を満たしていく。
卓也に続いてみんな外へと出て行くと、先生の車なのだろう、紺色のワゴンが丁度止まった所だった。
バンッと扉がスライドし、さとが飛び降りる。