i want,
夕方からは、男子が銭湯の掃除、女子が夕飯作りという分担で仕事を行っていた。
近所の銭湯の掃除をする代わりに、お代を無料にしてくれるということらしい。
食器の泡を流しながら、あたしも銭湯の掃除に行けばよかったと少し後悔した。
軽くため息をつき、全ての食器を流し終える。キュッと蛇口を捻ったその瞬間だった。
「あおちゃん、手伝うよ」
突然かけられた声に、あたしは驚きすぎて声を出すことすら忘れた。
あたしの横に山積みにされた、濡れたままの食器。
それに手を伸ばして乾いた布巾で拭くのは、元クラスメイトの恵美ちゃんと花ちゃん。
あたしは彼女達と、特に仲がよかったわけじゃなかった。
「こいだけの食器、一人で拭くの大変じゃろ?」
「ごめんね、全部やらして」
手際よく水滴を取り除いていく二人の手元を見ながら、あたしは「いや…」と小さく呟くことしかできなかった。
立ち尽くしたままのあたしに、彼女達は続ける。
「銭湯楽しみじゃねっ」
「オープン前に入らしてくれるみたいじゃけぇ、貸し切りじゃよ!」
「男子、しっかり掃除してくれちょるじゃろうか」