i want,

夕方からは、男子が銭湯の掃除、女子が夕飯作りという分担で仕事を行っていた。

近所の銭湯の掃除をする代わりに、お代を無料にしてくれるということらしい。

食器の泡を流しながら、あたしも銭湯の掃除に行けばよかったと少し後悔した。

軽くため息をつき、全ての食器を流し終える。キュッと蛇口を捻ったその瞬間だった。

「あおちゃん、手伝うよ」

突然かけられた声に、あたしは驚きすぎて声を出すことすら忘れた。

あたしの横に山積みにされた、濡れたままの食器。

それに手を伸ばして乾いた布巾で拭くのは、元クラスメイトの恵美ちゃんと花ちゃん。

あたしは彼女達と、特に仲がよかったわけじゃなかった。

「こいだけの食器、一人で拭くの大変じゃろ?」
「ごめんね、全部やらして」

手際よく水滴を取り除いていく二人の手元を見ながら、あたしは「いや…」と小さく呟くことしかできなかった。

立ち尽くしたままのあたしに、彼女達は続ける。

「銭湯楽しみじゃねっ」
「オープン前に入らしてくれるみたいじゃけぇ、貸し切りじゃよ!」
「男子、しっかり掃除してくれちょるじゃろうか」

< 157 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop