i want,
「…俺の名前、覚えちょる?」
「え?」
「それでえぇって、昔言わんかったっけ?」
その視線が、意地悪そうに笑った。あの時と、同じように。
「…ヒカル」
「うん」
「ヒカル」
「…うん」
垣枝の手が、あたしの頬に触れた。
それだけで、泣きたくなるくらい苦しい。
「…それでえぇよ」
…初めて触れた唇は、少しだけ、火薬の味がした。
ほんの一瞬。
でもそれは、あたしの中の永遠を少しだけ感じさせた。
一度離れた唇は、躊躇いながらも、もう一度近付く。
二度目のキスは、確かに永遠だった。
…夏の夜。
みんなの笑い声が、まるで別世界の様に遠くで響く。
チカチカと光る花火の影で、明るさと対照的な暗闇の中で、あたし達は初めてお互いを求めた。
それは、ずっと抱いていた、感情。
味なんかわからない程、あたしはヒカルを想った。
そして理由もわからずに、泣いた。