i want,

新学期が始まった。と言っても始まってからまだ2日で、夏休み気分は全然抜けない。
夏休みは沢山遊んだ。みんなで夏祭りに行ったり、綾達と小倉に行ったり、手分けして宿題と戦ったり。

特にヒカルと二人きりで遊んだというわけじゃなかった。それでも十分楽しかった。

「綾に言われたよ」
「何を?」

飲み終えたカフェオレのストローを噛み、ヒカルは遊んでいる。渡り廊下のすぐ隣は図書室。響いてるのは、あたし達の声だけ。

「あおは変わっちょるって」
「ほう」
「垣枝君が好きだなんて、気付かんかったって」
「へぇ」

ストローはヒカルの歯でぼこぼこにされ、やがて丸められて縛られた。最早ストローではなくなった。

「ヒカルも何か言われた?」
「べつにー」
「べつにーって…」

「まぁいいけどさ、」ココアをずっと啜ると、底にたまった甘すぎる液体が口の中に広がった。

ヒカルと付き合うことになって、まずさと達に、そして綾達に言った。さと達は大して驚かなかったけど、綾達は目をまん丸にして驚いていた。

無理もない。あたしは一言も、ヒカルが好きだと言ってなかったから。
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