i want,
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ホームルームの始まった校舎は、しんと静まり返っていた。普段は騒がしい生徒達も、まだ新しい学年に緊張しているのだろうか。たまに聞こえてくるのは、先生のものだけだ。
そんな校舎の中を、あたしは1人歩いた。向かう先は、行きなれた三階の渡り廊下。
階段をひとつずつ登りながら、期待と失望の狭間をずっと揺れている気分だった。
今日学校に来ている可能性なんてほとんどないだろう。
なのにあたしの足は、その可能性を信じて進んでいる。
いるかもしれない。
でもきっといないだろう。
その言葉を、ずっと脳裏でリピートしていた。
教室の少ない通りは、先生の声すら届かない。チリンチリンと聞こえたベルは、多分学校の外を通りすぎた自転車のもの。
階段を上がりきり、渡り廊下に視線を向けた。
図書館の隣。ほとんど活用されていない廊下の端。
上げた視線がその茶色い髪をとらえた瞬間、心臓が大きくひとつ鳴った。
その音がまるで聞こえたかの様に、茶色い髪が動く。
あたしの方に向いた目を見た瞬間、押し寄せた衝動が、涙腺を刺激しそうになって焦った。