i want,
「だからあたし、自分には2つの名前があるって思っちょるんよ。平仮名の『あおい』と、おじいちゃんがつけてくれた、『葵』」
2つの並んだ名前を見ながら、ヒカルは小さく「へぇ…」と呟いた。
二人、しばらく黙ったままだった。
「…あお」
「ん?」
「その話、俺以外の誰かに話した?」
唐突な質問に、あたしはきょとんとして首をふる。
「ううん。話す機会なんかないもん」
「ほうけ」
ヒカルはそう言って、自分の指で『葵』と書いた。
書き慣れない漢字だからか、あたしのを真似ながら書く。
「今度から俺、あおの名前はこっちで書くわ」
「え?」
「まぁ、書く機会なんかないかもしらんけどな」
自分が書いた『葵』に満足気に微笑み、よっと立ち上がる。
あたしは戸惑いながら上を向いた。
「俺だけじゃ。知っちょるのは」
そう言って外を見つめるヒカルの横顔が、窓に映った。その上に雨の雫石が降り注ぐ。
ヒカルのその一言に、くっと胸が締め付けられた。胸の高鳴りが苦しい。
何故だか泣きそうになった。
あたしはゆっくり立ち上がり、ヒカルの方を向く。耳にサァーっと雨の音が響く。
2つの並んだ名前を見ながら、ヒカルは小さく「へぇ…」と呟いた。
二人、しばらく黙ったままだった。
「…あお」
「ん?」
「その話、俺以外の誰かに話した?」
唐突な質問に、あたしはきょとんとして首をふる。
「ううん。話す機会なんかないもん」
「ほうけ」
ヒカルはそう言って、自分の指で『葵』と書いた。
書き慣れない漢字だからか、あたしのを真似ながら書く。
「今度から俺、あおの名前はこっちで書くわ」
「え?」
「まぁ、書く機会なんかないかもしらんけどな」
自分が書いた『葵』に満足気に微笑み、よっと立ち上がる。
あたしは戸惑いながら上を向いた。
「俺だけじゃ。知っちょるのは」
そう言って外を見つめるヒカルの横顔が、窓に映った。その上に雨の雫石が降り注ぐ。
ヒカルのその一言に、くっと胸が締め付けられた。胸の高鳴りが苦しい。
何故だか泣きそうになった。
あたしはゆっくり立ち上がり、ヒカルの方を向く。耳にサァーっと雨の音が響く。