i want,
……………
いつも笑い声が絶えないたまり場も、今日は妙な緊張感がはりつめていた。
あたしはどこか居心地の悪さを感じ、小さく俯く。
「…バカみたい。ただのひがみっしょ」
香緒がため息をつき、例の紙をあたしたちの輪の真ん中に投げ置いた。
「悪質な嫌がらせじゃろ。多分、垣枝君のこと好きな女とかじゃない?」
「何にせよ、手段が卑怯っちゃ。犯人見つけたらしめちゃるし」
はぁっと大きく息を吐く由利も、苛立ちを隠せない様だった。心配してもらっている安心感と同時に、申し訳なさも感じる。
あの手紙を見つけた次の日の放課後、綾がみんなを集めた。
あたしはあまり大事にしたくなかったのだが、独りで抱え込むこともできなかった。
神妙な顔をしているみんなの輪の中に、美晴が手を伸ばした。あの紙を取り、目の前に掲げる。
「…あおいさ、心当たりないん?」
「え?」
「こういうことされる」
ピラピラっとそれを振り、美晴はあたしの方を向いた。あたしは美晴から視線をそらし、小さく俯く。
「…わからん」
…わからなかった。
心当たりがあると、言ってもいいのかどうか。
幼かったあの息苦しい日々が、時効を迎えているのかどうか。