i want,
そんなヒカルが、一瞬笑った。
どこかで見た、あたしを揺さぶる表情。

苦しくて、ヒカルの名前を呼びたくて、再び口を開きかけたあたしを遮ったのは、他でもない、ヒカルの声だった。


「…悪かったのぉ」


たった一言。
たった一言そう言って、ヒカルは背を向けた。

しんと静まり返った教室に響くのは、ヒカルの遠退く足音と、その声の残像。

呆然と立ったままのあたしの脳裏に、こだまする様に響く。


『悪かったのぉ』


「…ヒカル、」

呟いて、駆け出した。

背中をさとの声が追いかけた気がしたが、あたしの足は止まらなかった。


ヒカルの一言が、胸を撃ち抜く程に痛かったから。


痛かったから。













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