i want,


……………

肌を突き刺す様な寒さも、今は何一つ気にならない。
あたしは無我夢中でヒカルの背中を追いかけた。

「ヒカルっ!!」

渡り廊下に差し掛かった時、ようやくその背中を捉える。あたしは思い切りその名前を叫んだ。

ヒカルの足が止まる。

息を整えることもせずに、あたしは彼に駆け寄った。

「ヒカル…」

側に寄り、立ち止まる。
二人の間には狭い空間。その空気が、冷たくて苦しい。

ヒカルがゆっくりと振り返った。心臓が痛い程に鳴る。

真っ直ぐにあたしを見据える。その瞳は、冬の空気と同じ。

「…何?」

冷たい。

「…今まで、何してたん?」

震える声で、あたしは訊いた。ヒカルはあたしから目を逸らさずに答える。

「特に何もしてないわ。街行ったり、色々」
「色々って…」
「あおは?どうしちょったん?」

ヒカルの声は、嫌になる程冷静だった。頭の中がぐるぐる回る。本当にずっと会いたかったヒカルが目の前にいるのかすら、正確に判断できない。

そんなあたしの手の先に、ヒカルの視線が動いた。滞ったあたしの思考じゃ、判断が鈍る。
< 251 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop