i want,
……………
事態は、一瞬で変わった。
ヒカルと会ってから1週間。まるで嵐の前の様に、穏やかな日々が過ぎた。
何事もなかったかの様な日々。
でも確実に、変化は起こっていたのだ。
永遠に溶けない雪なんか、存在しないのと同じで。
「あお…っ」
放課後の廊下、久しぶりに声をかけられた。
驚きすぎて声が出せない。
部活に行こうとしたあたしの足を止めたのは、歩夢の声だった。
教室の前。歩夢は戸惑いを隠せない表情で、あたしを見ていた。
階段を降りようとしていたあたしは、いぶかしげな表情を歩夢へ向ける。
いつぶりだろう。歩夢と話をするのは。
少なくとも中学生になってからは、一度も会話はしていなかった。
別に仲が悪くなったわけじゃない。
歩夢はみど側について、あたしはそれを受け入れた。それだけだった。
そんな彼女があたしを呼び止める。あまりにも唐突で、事態が飲み込めなかった。
しばらく逡巡していたが、歩夢は意を決した様にあたしの元へ駆け寄ってきた。微かに震えている様だった。
「…何」
あたしも構えて、小さく呟く。その声があまりにも冷たくて、自分でも驚いた。