i want,
潤君達に囲まれる様にしてうずくまっている、真っ赤な制服。

制服だけじゃない。
髪の毛から靴下まで、全てが真っ赤だった。

そこでようやく、自分の鼻についている匂いの正体を知った。


…ペンキだ。


場の状況を理解していないあたしの方に、みどが埋めていた顔を向けた。

口元が小さく動く。でもそれが声にならない。

赤い筋と一緒に流れる、透明な涙。
恐怖に歪んだ顔は、あたしにまで恐怖を伝染させる。


自分が震えていることに、その時気付いた。


「何…してんの、」


震える声で呟く。
視線を動かすと、凹んだペンキの空き缶が見える。

「何って…」
「見てわからんか。しめよるんじゃ」

潤君の声に被さって聞こえた声。
一瞬、瞬きを忘れた。

町体裏の非常階段。
まるで高見の見物のように、1人そこに腰かける。

視線を向けた時、初めて自分の目を疑いたくなった。


「…なんで、そこにいるの」


掠れた声で呟く。
悲しみなのか怒りなのか、自分の感情がわからない。

立ちすくむあたしを見て、ヒカルが小さく笑った。

冷たく、笑った。

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