i want,

「お前もやればいいが」

その笑みのまま立ち上がったヒカルは、顎で階段の下を示した。そこにはまだ開いていないペンキの缶が並んでいる。

あたしはひたすら、自分の耳を疑った。

眉間にしわを寄せたまま、ただヒカルの方を見る。

「赤だけじゃのぉて、黄色も青もあるが。文字通り"お前色"にこいつ染めてやれや」

みどの近くまで来たヒカルは、まるで汚い物を見る様な目線を彼女に送る。みどが一瞬震えるのがわかった。

「それいいなぁ!赤ばっかでもつまらんしなぁ」

潤君が面白そうに笑い、他のみんなも同じように笑う。
その中心で、ヒカルもまた笑う。

変わらない、冷たい笑みで。

周りの笑い声、恐怖に震えるみど、そして、ヒカル。

全てがあたしの中を駆け巡り、気付いた時には乾いた音が辺りに響いていた。


じんとする手のひら。

叩かれた頬を押さえることもせず、尖った視線をあたしに向けるヒカル。


「…何で笑うん、」


胃が、体が、熱い。


「何で笑うんよっ!!」


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