i want,
自分の声がかすれそうになるのを必死に堪える。

泣いたらだめだ。

「ヒカルはこんなことする人やない。ねぇ、違うやろ?」

すがりつく様な声で訊きながら、あたしはヒカルの腕を掴んだ。

ヒカルの体温は伝わらない。

ヒカルの表情も、変わらない。


「…綺麗事じゃ、あお」


冷たい笑顔から発せられたその一言が、あたしの目の前をすっと暗くさせた。


『綺麗事じゃ』


一瞬、全ての力が抜けた。

「…もう、わからんよ」

俯いて、呟く。

息が苦しい。


「あたし、ヒカルがわからん」


…もう、わからない。

変わってしまったヒカルを、この冷たい笑顔のヒカルを、あたしはどうやって支えたらいいのか。


どうやって側にいたらいいのか。

< 263 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop