i want,
消えそうな一言。
一瞬、ヒカルが泣いているように見える。

胸が張り裂けそうだった。
痛すぎて、声が出ない。

何か言わなきゃ。
言わなきゃヒカルは。

「お前も来いっ!」

不意にヒカルの腕が捕まれた。
生徒指導の先生は、そのままヒカルを引っ張って行く。

ヒカルは逆らうことなく、その身を任せた。


視線が、途切れた。


「お前らここで何してたんだ?」
「菊地さん…先生、保健の藤牧先生を!」

その場に残ったのは、あたしとみどだけだった。

泣き続けるみどに、先生達がなだめる様に近づく。

誰かがあたしに何かを言った。

でもそれは、あたしの中に届いてこなかった。


あのヒカルの表情が。

あのヒカルの言葉が。

あのヒカルの、途切れた視線が。


渦を巻いて、消えていった。


何も、残らなかった。














何かが、終わった。














< 265 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop