i want,


……………

白い湯気がふたつ、灰色の空へと昇っていく。

公園のベンチ。その上にうっすらと積もった雪を払い、あたしは腰かける。

雪は止んでいた。それでも指先は冷たかった。


…最近よく考える。

この人がいなかったら生きていけそうにないと、本気で思う人は誰だろうって。

家族。綾。さと。真依。
挙げていったらきりがない。

ほんの少し前までは、ヒカルさえいてくれたらいいと思っていたのに。
なのに今、ヒカルの名前が浮かばない。

麻痺してるみたいだ。

指先だけじゃなく、心も。


「…矢槙、」

声がして、考えるのを辞めた。
視線を上げると、目の前に見慣れた顔。丁度マフラーを口元まで引き上げた瞬間だった。

「…おそいよ、田口」

あたしも真似してマフラーを引き上げ、意地悪な笑顔を見せる。
田口も苦笑して、あたしの隣に座った。

隣に置いておいたカップを渡す。田口は軽く会釈をして、それを受けとる。

渡した瞬間、田口の指先があたしのそれに触れた。

あたしと同じ。冷たい指先。

「何、話って」

少し温くなったココアをすすり、田口が訊いた。
今日はあたしが呼び出していた。

「あぁ…、うん」

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