i want,
別に言い出しにくいわけじゃない。
ただ、言葉にするのが嫌なだけで。


「…ヒカルと、終わったかも」


一瞬、時が止まった気がした。

あたしの動きも、田口の動きも、止まったから。

「…そう、」

先に口を開いたのは田口。
その田口の声を聞いて、なんだか泣きそうになった。


…あぁ、そうか。

口に出すのも、誰かに聞いてもらうのも、これが初めてなんだ。

「…田口の、言う通りだったんかもしれん。あたし…ヒカルの全てをわかってるつもりじゃったけど…実際、何もわかっちょらんかったわ」

苦笑しながら言ったのは、なるべく深刻な空気にしたくなかったから。

そんな空気、なんだか本当に、終わってしまったみたいだから。

「もうあたし…どうやってヒカルの側におったらいいかわからん。どうやって…ヒカルを、守っていいかわからん。だって…」

もう脳裏に焼き付いた、あのヒカルの表情。

冷たく哀しい、視線。

「今のヒカル…あたしの知っちょる、ヒカルやないんやもん」
< 269 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop