i want,
「お前がヒカルといて幸せなら、それでいいって思ってた。綺麗事かもしれないけど…でも実際、お前とヒカルは特別な気がしたから」
「…特別?」

思わず顔を上げる。
田口と目が合い、急いで反らした。

今は、田口を見れない。

「うまい言葉が見つからないけど。なんか…求めてるものが、同じな気がした。だからこそ…壊してやりたいとも思った」

「矛盾してる?」、田口が訊いたから、あたしは俯いたまま首をふる。

人間なんて、矛盾だらけだ。
それはもう、痛い程よくわかってる。

「…別に、付き合って欲しいなんて言うつもりはないから。今までヒカルがいた位置に俺がいれるわけないし。ただ言いたかっただけって言ったら、違うかもしれないけど…」

一瞬、言葉が途切れた。
でもすぐに、悟った様な声が続く。


「終わらせたかったのかもな。言葉にして…この気持ちを」


そう言って、残りのココアを飲む。
あたしは俯いたまま、何を言えばいいのかわからずにいた。


『終わらせたかった』


人も、気持ちも、何もかも。

変わらないものはない。
終わらないものは、ない。

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