i want,


……………

校内に始業のチャイムが響いた。三年になって授業をサボるのは、これが初めてだと今更気付く。

思えば前は、よく授業をサボっていた。懐かしく思える程時はたっていないのに、なんだか遠い昔のことのよう。

思い出の場所に向かっている気持ちが、なんだか悲しかった。

まだ思い出になんかしたくないのに。
どこかであたしが呟く。

それでも止められない何か。

永遠に続くと思っていても、いつの間にか訪れる。


階段を登る足取りは重かった。
一歩登る度、終わりが近付いてる気がして。

自分から決めたくせに。
なのに辛いなんて、矛盾してる。

ぐるぐると回る思考回路。
まとまった様でバラバラな気持ちのまま、あたしはあの渡り廊下へと向かった。

図書館へ続く渡り廊下。
ずっと、足を向けていなかった場所。

この角を曲がれば、もうそこは渡り廊下だ。

心拍数が、徐々に上がる。

この階段をあたしは何度駆け上がり、何度この角を曲がっただろう。

そうして何度、その先に笑顔を向けただろう。

愛しい、あの人へ向かって。


軽く深呼吸をする。

手にかいた汗を拭って、あたしは最後の一歩を踏み出した。

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