i want,


…多分、甘えてた。


ヒカルと別れて、ヒカルを失って、それでもいつかまた会えると、根拠もなく信じてた。

会えたらまた、何かが変わるんじゃないかって。

またヒカルが、昔みたいに笑ってくれるんじゃないかって。


会える距離に、甘えてた。


「…バカ、みたい」


呟きは、春の空気に消えていく。

表情を変えることのないまま、頬に伝うのは冷たい涙。

今更泣いても、もう遅い。
今更気付いても、もう遅い。


だって、ヒカルはいない。


もう、会えない。


「…っ、」


苦しくて悲しくて、あたしは自分を抱き抱える様にして泣き崩れた。

ヒカルと別れても、ヒカルと終わっても、ヒカルを失うことはないと思っていたから。

余りにも簡単に終わりの言葉を告げてしまった。
その事の大きさに、今更ながら気付く。


「ヒカル…っ」


泣きながら呼ぶ。
でももう、返ってこない。

もう、届かない。



…まだ肌寒さの残る3月。

新しい門出を迎える終わりの中で、あたしとヒカルは、本当に終わった。

初めて感じた衝動も、幸せも、痛みも、切なさも。


本当に、終わった。















< 298 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop