i want,
…多分、甘えてた。
ヒカルと別れて、ヒカルを失って、それでもいつかまた会えると、根拠もなく信じてた。
会えたらまた、何かが変わるんじゃないかって。
またヒカルが、昔みたいに笑ってくれるんじゃないかって。
会える距離に、甘えてた。
「…バカ、みたい」
呟きは、春の空気に消えていく。
表情を変えることのないまま、頬に伝うのは冷たい涙。
今更泣いても、もう遅い。
今更気付いても、もう遅い。
だって、ヒカルはいない。
もう、会えない。
「…っ、」
苦しくて悲しくて、あたしは自分を抱き抱える様にして泣き崩れた。
ヒカルと別れても、ヒカルと終わっても、ヒカルを失うことはないと思っていたから。
余りにも簡単に終わりの言葉を告げてしまった。
その事の大きさに、今更ながら気付く。
「ヒカル…っ」
泣きながら呼ぶ。
でももう、返ってこない。
もう、届かない。
…まだ肌寒さの残る3月。
新しい門出を迎える終わりの中で、あたしとヒカルは、本当に終わった。
初めて感じた衝動も、幸せも、痛みも、切なさも。
本当に、終わった。