i want,
そんなことをぼんやり考えていたら、不意に携帯が鳴った。
みんなの笑い声の中、通話ボタンを押す。

「はい?」
「あお?ちょー店の前出てきぃ」
「さと?」

電話の相手はさと。そういえばさっきから、さとの姿が見えない。

「コート着てきぃや」
「は?何?」
「ええから。じゃあな」
「ちょ、さ…」

聞き返すあたしの声は、通話終了を示す音に遮られた。意味がわからないまま携帯を閉じる。

「あお?どした?」
「あ…うん。ちょっと出てくるわ」

でも意味もなくさとが呼び出すはずもない。
あたしはコートを手にし、みんなの輪を抜け出した。

店のドアを開けた瞬間、またみんなの笑い声が響く。
冷たい空気とそれが、綺麗に調和した気がした。














< 306 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop