i want,
……………
冷たい夜の空気は、アルコールで火照った頬に気持ちよかった。
向かい合ったベンチに四人腰掛け、話に花を咲かせる。
「じゃあ田口は今東京なん?」
「うん」
「天下の東大じゃけぇの。田口ならやる気はしとったが」
「何だよそれ」、笑いながら少し冷めたコーヒーを飲む。
中学から進学校に通い始めた田口。高校も県内随一の進学校に通い、結果、さとの言う天下の東大だ。
それでもその学歴を鼻にかけないところが、田口らしいといえば田口らしい。
「上杉は、今広島の大学だっけ」
「うん。せっかくあおも神ちゃんも関西来たのに、すれ違いじゃったね」
肩をすくめてみせる真依は、今広島の女子大に通っていた。
関西の大学に決まった時、もしかしたら真依と近くになるかもと期待していたことを思い出す。
結果すれ違いだったわけだが、こうやって昔と同じ空気で話せる関係は続いている。
やっぱり素直に、嬉しかった。