i want,

そこまで言って、ヒカルは言葉を切った。
俺は落としていた視線をヒカルに向ける。

頭の下にあった腕が、ヒカルの顔の上にあった。

丁度目の上に。
ヒカルの表情を、隠すかの様に。


「泣かせることしか、出来んかったのにな」


そう呟いた口元から、次第に笑顔が消える。
声をかけたかったが、何を言っていいかわからない。

そんなことないと、どうして俺が言えるだろう。

そんなのただの気休めだ。

矢槙は確かに、泣いていたから。

「あー…」

何かを吐き出すかの様に、呟く。片方の腕は目を隠したまま、もう片方の手で、胸の辺りの服を掴む。


「…いてぇ、」


…それが多分、ヒカルの答えだった。

俺は耐えられず、ヒカルから視線を反らす。

机の方を向き、頭を抱える様にして、「ヒカルは、悪くない」と呟いた。


ヒカルは何も言わなかった。















< 319 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop