i want,
「それ…どういう意味?」
「言葉のまんま。ヒカルは、お前らが思ってる様な奴じゃないよ」
「あたしらが思っちょるって?」
「普通じゃないってこと」
…普通じゃない?
その言葉は、平凡な毎日を送っている田舎の小学生には、あまりにも違和感のありすぎるもので。
だから当然の様に、リアリティーがない。
「…ようわからん」
「わからなくていいよ。矢槙みたいな単細胞な奴に、どうせヒカルはわかりっこないから」
お得意の馬鹿にした言葉を最後に立ち上がる。
隠し部屋から出ていく田口の背中に、「どういう意味さっ」と投げ掛けた。
『普通じゃないってこと』
…田口のこの言葉の意味がわかるのは、もっと先のこと。
でもそれは、ヒカルのせいなんかじゃなかった。
誰が悪いとか悪くないとか、ヒカルのほんのひとかけらしか知らないあたしには言えないけど、でも今ならわかること。
ただ、幼すぎたんだ。
ヒカルの持つ闇に、誰も気付いてあげられないくらいに。