i want,
「…うん、」
あたしだってさとを忘れることなんかできない。
できるわけがない。
あたしでさえそうなんだから、綾が忘れることなんかできるはずがない。
「…いいよ、それでも。ほんとにさとは、綾の側におると思うけぇ」
…多分さとは、綾が幸せになってくれることを望んでいるだろう。
いつまでもいなくなった自分に縛り付けられるんじゃなくて、新しい恋をして、笑ってほしいって。
きっとさとならそう思うはずだ。
でも今は。
今はまだ、さとを想わせてあげたい。
そんな簡単に忘れられる様な、そんな恋じゃなかったはずだから。
「…ありがとう」
小さく呟く綾の声は、みんなの笑い声にかき消されそうな程で。
でもきっと、さとには聞こえてる。さとには届いてる。
そう信じれる。
二人の恋は、そういう恋だったから。