i want,


……………

入り口と同じように段ボールの貼り付けられたドアを開けると、一瞬で現実世界に戻って来た。

明るい昼の光が両目に眩しく染み込む。


「あ~、ようやくでてきよったし!」


廊下の端に座っていた歩夢が、立ち上がって言った。

見るとみんな既に揃ってる。
当然と言えば当然か。あたし達は、こっそりアイスを食べていたわけだし。

「何しよったんよ」
「や、別に…ねぇ?」

助けを求めて田口に視線をやるが、当の本人は知ったことかと飄々とした表情をしている。

「怪しいんだー。大体なんであお、田口とペアになったんよ~」
「や、それはさ!その…」

益々答えにくくなる。

真依はさと、みどを垣枝にしようとすれば、必然的に残ったのは卓也と田口。

男子には人気の田口だけど、その態度から女子にはそうじゃないことは知っての通り。そんな田口を、歩夢に押し付けるわけにはいかない。


…なんて、いくらあたしでも本人を前にして言えるわけがなくて。

< 34 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop