i want,
……………
時計を見るのは、今日で何度目だろう。針はもう7時を回っている。
さとの家の側のバス停。最終のバスは7時過ぎ。
この次のバスに乗っていなければ、今日はもう来ないだろう。
雨脚が強くならなければいい。
傘を持ち直し、雫石で少しだけ濡れたマフラーを引き上げた。
昨日は来なかった。
一昨日も来なかった。
もしかしたら来ることはないのかもしれない。
そう思う度に、心が重くなる。
でもほんの少しでも可能性があるのなら、あたしは待つ。
今会わなければきっと、もう勇気が出ないだろうから。
…さとがいなくなってから、49日が過ぎた。
通夜も葬式も成人式も、ヒカルはさとに会いに来なかった。
知らないはずはなかった。
知っていて会いにこないはずも、きっとない。
信じようと思った。
ヒカルはきっと、さとに会いに来る。
ヒカルを、信じようと思った。