i want,
……………
ヒカルが向かったのは、小学校のグラウンドだった。
雨上がりのグラウンドは湿っていて、歩く度にブーツに泥が散る。
でもあたしは気にせずに、ヒカルの背中を追った。
二人、言葉は交わさなかった。
…「ちっちゃいなぁ」
グラウンドの端の鉄棒に触り、ヒカルが言った。
あたしも隣に並び、雫石のカーテンを揺らす。
懐かしい場所だった。
目を閉じると、花火の香りが蘇りそうな場所。
雫石を手で払った後、ヒカルはそこに腰かけた。
あたしも少し間隔を開けそっと座る。
あの頃よりもグラウンドは、狭く感じた。
「…いいの?お墓は」
「あぁ。また行くけぇ」
「…そっか、」
結局ヒカルは、さとの家で線香をあげただけだった。
仏壇に向かって手を合わせる横顔は、とても静かなものだった。
静かな悲しみを、感じた。
「…知ってたん?さとの…こと」
あたしの問いかけにヒカルは少しだけ顔を上げて、「…あぁ」と小さく呟いた。
「今年に入ってすぐ、秀則から聞いた」
「…そう」
「早いよなぁ…」
吐き出す様に呟いて、空を見上げる。
その横顔から吐き出される息が、空に白く浮かんだ。