i want,
「…早ぇよ、神野」
ヒカルの言葉に、胸がぐっとつまる。
あたしは俯いて、ただ「うん」としか答えられない。
去年の冬は、ヒカルがいなかった。
心の隅で、いつかみんなで会える日がくるだろうかと、小さく思った。
でももう、そんな日はこない。
もう二度と、こない。
「…成人式、来んかったね」
消えない胸の痛みを抱えながら、あたしは小さく訊いた。
ヒカルが空から視線を剥がす。
「…合わせる顔が、なかったけぇ」
足元を見つめて、淡々と言った。
「神野のこと知った時は、もう葬儀も終わった後じゃった。知らんかったとはいえ…送り出しも何もできんかった。…他の奴等に、合わせる顔がねぇよ」
自傷的に苦笑して、ヒカルは続ける。
「だから敢えて、49日後に行こうと思ったんよ。誰もおらんと思ったけぇの。…でも、」
言葉を切って、ゆっくりと顔を上げた。
視線だけをあたしに向ける。
懐かしさを帯びた、力強い視線。
「まさか、お前がおるなんての」