i want,

…それはあまりにも、馬鹿みたいな約束。

約束と呼べるのかもわからない。
保証なんかどこにもない。

それでも今、あの想いを満たすためには、この約束しかなかった。


いつか、ひとつになって生まれることができたなら。

その時きっと、この想いが満たされる。

この想いが、ひとつになれる。


だから、それまでは。


「…うん」


白い息を吐きながら、あたしも小さく頷く。

この約束だけが、唯一あたし達の想いを救ってくれそうな気がしていた。


だからそれまでは、救われないままでも。


埋まらないままでも、いいから。



「…ずっと、好きやった」



…唐突なヒカルの声が、世界の動きを止めた。

一瞬、呼吸すら止まった錯覚に陥る。

瞬きを忘れたまま、あたしはゆっくりとヒカルの方を向いた。


「ちゃんと言葉にしたこと、なかった気がしたけぇ。いつかもう一度会えたら…ちゃんと、伝えたかった」

そう言って真っ直ぐ、あたしの瞳を見つめる。


あの頃と同じ色で。

同じ、感情で。



「…あおが、好きだった」



< 354 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop