i want,

ヒカルの真っ直ぐな想いが、ずっとあたしの中にあった塊を溶かしていく。

ずっと、抱えていた痛み。

足りなかった、何か。


…ずっと、叫んでた。

言葉にならない想いを、抱えてた。

でもそれを言葉にする努力を、あたし達はずっとしてこなかったんだ。

たった一言。
それだけでどれだけ痛みが消えるか、あの頃のあたし達は知らなかった。


満たされるわけじゃない。
言葉なんかじゃ到底足りない。


でもわかってたはずじゃない。


いつだって不安定なあたし達に必要だったのは、壊れやすくても明確な言葉だって。



「…好きだったよ」


ずっと言いたかった、でも言えなかった、一言。

頬に冷たい筋を感じる。



「あたしもヒカルが、好きだったよ」



…好きだった。


ずっと好きだった。


もがき続けてたあたしの中にあった言葉は、その一言だった。

言葉にならない想いの中で、唯一明確に言葉にできる想い。



ヒカルが好きだった。


ずっと好きで、仕方なかったんだ。



名前を呼ぶだけで、涙が止まらない程に。



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