i want,

頬を伝う涙を、ヒカルの冷えた指先がそっとすくった。

久しぶりにヒカルに触れて、心臓が締め付けられる。

痛いのに愛しいこの痛みを、あたしはずっと求めていた気がする。


涙をすくったヒカルの手のひらは、そのままあたしの頬を包んだ。
止まらない涙と同時に溢れ出す、忘れられない衝動。

いつまでも消えない、感情。



「…好きだ」



ヒカルの呟いたたった三文字の言葉が、あたしの身体中を満たしていった。

止まらない涙の理由は、多分ひとつじゃない。

ゆっくりとヒカルが近付いてくる。

夜の闇の中でも、その顔立ちがはっきりとわかる程に。


目を閉じてしまえばきっと、ヒカルに触れることができる。

この衝動が、叫んでる。


…でも。



「ヒカル、今あたし…っ」


二人の距離があるかないかの所で、あたしは俯いて言った。

沸き上がる衝動は、今もまだ変わらない。

感情も何もかも、きっとあの頃のまま蘇る。


でも。



「付き合ってる人が…いる、」



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