i want,


……………

お祭りで浮き足立つ人達の間を抜けて、出たのは学校の裏庭。

引かれるがままに来てしまい、自分が上履きのままだと気付いた時には、お祭りのざわめきは遠いものになっていた。

「ちょっ、垣枝、」

痣ができてしまいそうだと、思った。

あたしの右手首をしっかりと握りしめる垣枝。

その力が、じゃなくて、別の何かが、あたしの手首に痣をつける。

「垣枝っ、痛いっちゃ!」

振り払った。
左手で自分の手首を包む。

背を向けていた垣枝が、あたしの方を向いた。


その視線、既視感。


あぁ、あの、初めて会った席替えの。


「お前さ、」

圧倒されたままのあたしに、垣枝が言った。

「あぁいうの、やめろいや」
「あぁいうの…って?」
「菊地のことじゃ」

ドクンと心臓が跳ねた。
右手に力を入れる。

「みどのことって…」
「こそこそ何か企みやがって。女子に気ぃ使ったり、わざと俺と菊地をペアにしたり。なんなんけ、あれは。そういうの本気でうざいんじゃ」


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