i want,
……………
「今日はカレーを期待してたんやけど」
「文句あるなら自分で作れば?」
口元を尖らせる彼の前に、あたしはほかほか湯気が上がるクリームパスタを置いた。
「あたしはパスタが食べたかったんじゃもん」
「冷蔵庫の材料使えってゆうたやん」
「お肉もないのにカレーを作れと?」
多少乱暴にレモン水を置いたからか、彼は肩をすくめて「いただきまーす」と素直に箸をつけた。
「うまい?」
「ん、うまい」
あたしも座ってパスタを頬張る。我ながら、なかなかよくできたと思う。
「あお、今日面接?」
「ん、面接」
「どやった?」
「まぁ、手応えはあるかな。多分大丈夫」
「関西の会社?」
「大阪」
「ふーん」、興味あるのかないのか、レモン水を軽く飲んで呟いた。
「ヒカルは?今日は仕事どやったん?」
「ん?普通」
お得意の『普通』。ヒカルは、あまり自分の仕事の話をしたがらない。
それをわかっているから、あたしも敢えてそれ以上は聞かなかった。
お互いのクリームパスタがなくなった頃、丁度時計の針が9時を指した。